Fishery Future 養殖業の未来を模索する 

元増養殖研究者、陸上養殖従業員が水産業・養殖業に関する出来事について、考えたことをつらつら述べます。

いま話題のChatGPTに聞いてみた【養殖事業に適した対象魚って?】

ChatGPTと作る水産事業計画の第二弾。
今回もChatGPTに聞いてみる企画となっている。


前回はこちら ↓

pacific-ocean.hatenablog.com


今回は、養殖対象魚についてChatGPTに聞いてみる。

養殖事業を興す想定のとき、まず考えるべきは、養殖対象魚だ。



・水温
・pH
・硬度
・昇温する/しない
養殖場近くに販路があるか
・収益が見込めるか


等々、多様なファクターがある中で、事業者は対象魚を選ぶ必要がある。これはかなり難しい選択だ。


......まあ実際には、事業者の飼育経験のあるなしで養殖対象魚を決定することがほとんどだろう。
(巨大資本を有する商社は除く)

しかし、中には0からの養殖を検討する人もいるだろう。
また、GPTの判断する養殖の適性ある魚種とは何か、興味がある人もいるだろう(筆者はそう)。

そういうわけで、ChatGPTに養殖事業に適した対象魚について聞いてみる。
個人的には面白い結果となったと思う。ChatGPTの出力結果について、私見を交えて意見しているので、参考になれば幸いだ。


それでは以下どうぞ。

Q. 養殖事業に適した魚種を示せ。


雰囲気が、やはりある......が!


よくよくみて欲しい。今回の出力結果はツッコミどころまみれだ。


私が指示したのは、"養殖魚種"である。しかし出力されたのは、ご覧の通り、サケ、マス、タイに加え、エビとカキである。魚種にエビとカキが入っているのが、オモシロポイントだ。片や節足動物、片や軟体動物である。魚種というには苦しい。魚介類ならわかるのだが......。


なんなら、貝殻類というか架空の類が生まれてしまった。貝殻というのは、あくまで軟体動物の生成する硬組織のことを指す。何を指したかったんだろう。二枚貝綱とか......?

ChatGPTのいうサケって何?

サケというと、シロザケ、ベニザケ、ギンザケといった魚種があげられるが、それぞれ養殖事情が異なる。そこで、ChatGPTが示す、サケとはなんだろうか。考えてみる。


まず、シロザケについて検討してみるが、シロザケの養殖は、現状事例がほとんどない。

丸紅が釧路市にて事業検討・飼育中との情報があるが(2022年11月)、ChatGPTは2021年時点での情報から結果を出力してるとのことなので、丸紅の事例をChatGPTは知らないだろう。


ベニザケはどうだろうか。ベニザケに関しても、養殖事業化を目指す試みが進行中だ。

シロザケ同様北海道内の根室市で、現在実証試験中との情報が入っている。(2022年9月)しかしこれも時期的にChatGPTは学習していないだろう。ChatGPTがベニザケ養殖を推奨しているとは考えにくい。


ともすれば、ここでいうサケはギンザケを指していると思われる。
うん。ギンザケ養殖って言われれば、妥当かな......?
チリ、ロシアでのギンザケ生産も盛んなため、世界的に重要な魚種(?)としてもいいような気がする。


あるいは、ChatGPTがサケ=サーモンと学習している可能性もある。アトランティックサーモン、キングサーモンはもちろんサケ科だ。

昨今、サーモン養殖の優位性が謳われて久しい。その関連で、サーモン≒サケ→サケは世界的にも重要な養殖魚というロジックはありうる。

サケを英語翻訳するとsalmonになってしまうのも厄介なポイントだ。このおかげで、サケ、サーモン、マスの違いについて、著者の理解が遅れていたのは秘密である。

じゃあChatGPTがマスとサケを区分できたのはなんで?

う〜ん......。

トラウトサーモン(ニジマス)、ヤマメ、イワナあたりを抽出して、マス養殖は養殖事業に適すると示したのだろうか......?

ここらへんはわからないところだが、いずれにせよ、マス養殖は盛んであるし。サーモン戦国時代に片足突っ込んだと思しき昨今、この指摘はまさしくそうである。 Good Job ChatGPT.

養殖適正魚◎のタイ


最後となるが、タイ(業界用語ではマダイ)は適切だろうと思う。日本においては長らく、ブリに次ぐ養殖魚生産量第二位の魚種であるし、水産研究の魚種として利用されることの多い魚種である。

知見が豊富な魚種であることは、多様なバックアップが受けれる可能性があることを示している。
ChatGPTがおすすめするのも理解できる。これもGood job ChatGPT.



結論


以上、サケ、マス、カキ、エビ、タイと特色ある魚種(?)をChatGPTはチョイスしてくれた結果となった。


今回は前回と比べると微妙な結果となったと言わざるをえない。

確かに、養殖魚介類を模索する過程なら、エビとカキも選択肢としてあがってくるのは確かだ。バナメイエビはホットな養殖だし、カキは無給餌養殖であるため、餌代がかからないメリットは大きい。

でも今回は魚種を指定したんだよな......。カキとエビて......。


魚種を示せ、というより、種名を示せ、と指示した方が良かったかなと反省する筆者であった。